第1章 エジプト紀行 07

 

ルクソール神殿の秘密

 現在ルクソールと呼ばれているナイル側の東岸の都市の始まりは、南のサンクチュアリと呼ばれ、紀元前1400年前に始まったとされる古代エジプトの首都「テーベ」のことです。テーベは新王朝時代に繁栄した都市で、ナイル川を挟んだ西岸に歴代のファラオや王族、貴族たちの墳墓がある「王家の谷」があります。

 古代都市テーベに立てられた「カルナック神殿」の中心部はアムン神に捧げられたアムン大神殿で、「ルクソール神殿」はそれに付随した建物です。 

 この神殿群を建造したのは主に二人のファラオで、第18王朝のアメンホテプ三世(紀元前1390年 ~1352年)が中心部を建設し、その後に七代のファラオ交代を経て、第19王朝(紀元前1279年~1213年)のラムセス二世が外側を増設したとされています。

 古代エジプトの叡智を紐解いて、その秘教的な叡智の方向性を調べていくほど、今までのエジプト文明に関する観念が総崩れになっていきます。

 現在では少しづつではありますが〝ギザの大ピラミッドはファラオの墓などではなく、巨大な発電装置である〟という見解が一般に広がり始めています。ピラミッドの建築様式も、プレ・インカ帝国に見られる、剃刀の刃も入らないほど精密に加工された石組みと同じ方法で石が加工され、積まれている部分も人々の注目を浴び始めています。

 また様々な神殿群に残されている巨像の精密さは人間業ではなく、何かしらの電動ドリルなり、高度な科学技術によって計算されて製造されていることも指摘されています。現代の石切り技術者も、工場技術者も、オベリスクなどに刻み込まれたヒエログラフはノミと石鎚ちなどで彫り込まれたのではなく〝電動の機械によって精密に刻まれている〟と語っています。古代エジプト人が作り上げた想像を絶しているの石造りの建造物は、人間の手がノミを石で叩いて削り、同じように石で表面を滑らかに仕上げたという見解は現実性に欠けるのです。現在の文明の機器を使っても建造することが出来ない、再現することが極めて難しい建築物や造形品の数々を、古代の人々が造ったという視点だけで、石鎚とノミの世界に押し込める方がナンセンスなのです。

 様々な巨石を使った建築物の建造方法が機械的な技術で成されているという視点の他にも、それらの神殿などはイメージやアイデアから抽象的に設計されているのではなく、精密に計測され、数学的にも、医学的にも意味を持っているという見解があります。

 ジョン・アーサー・ウェスト氏の「サーペント・イン・ザ・スカイ」という本の中では、古代エジプト人は建物に数学的な意味を持たせて建造したのだと推測しています。ルクソール神殿という建物そのものが「音楽として調和的なハーモニー」を表現して建設され、「人体に関する立体的な教科書」であるという内容です。 

 アイデア的にはとても興味深いのですが、ルクソール神殿の時間的な流れを調べていたら、幾つか疑問が湧いて来ました。なぜなら、この建設に関する時間的な流れを見る限りでは、かなり長い歳月が空いているからです。単純計算で紀元前1390年から1213年を引いたとしても、177年の歳月が流れています。数学的に人体の構造を現している神殿コンプレックスの全体を建造するのに9世代ものファラオの交代を経ています。もしそのようにして建造されたのであれば、第18王朝のアメンホテプ三世から第19王朝のラムセス二世の統治の時代まで「神殿の設計図」が受け継がれて来たということになります。

 建設が始まった当時にルクソール神殿の設計図が存在し、それが長きに渡って受け継がれながら完成を目指したというのであれば意味は通ります。もし今後の発掘調査で神殿の設計図が出て来たとしても、次の疑問として「それらの知識はいったいどこからやって来てたのか?」「何を目的として授けられたのか?」という別次元の問題が現れます。

 ジョン・アンソニー・ウェスト氏のルクソール神殿の秘密の謎解きには驚愕的な発見があります。ルクソール神殿の建設行程は四段階に識別することが可能で、それは人間の四段階の成長を現していると解説しています。ルクソール神殿は人間の生きた構造をイメージとして現したもので、神殿の進化は、下垂体の支配による人間の四段階の成長の過程を現しているそうです。

 ルクソール神殿を人間の姿に例えた時に頭部に当たるのが王冠のホールで、この部屋の構造は人間の〝視覚〟に関係しています。人間が眼を通してものを見る時は、左目から映像が右脳へと送られます。王冠のホールの構造は、右目で受け取った映像は左脳に届けられる過程で交差して反転し、鏡像となる眼の視覚中枢を現しています。生理学的に視覚神経の数は合計12本で一つにまとまってますが、それを現すかのように王冠のホールに立ち並んでいる柱の数は12本です。

 人間の視覚神経の領域が視覚の中枢であり、意識にも関係しています。

 視覚中枢の構造を建築的に現した部屋の上には、 脳の高次な役割に関係するホールがあり、3つの部屋を区切っている石壁の中に、ルクソール神殿の中で最も驚異的な事例の発見があります。この部屋が松果体の部屋で第三の眼に関係し、その構造はイメージ処理の脳の機能を現しているそうです。それぞれの部屋の壁に刻まれているイメージは一つの表意文字としては未完成で、反対側の壁に刻まれているイメージと組み合わせることによって一つになり、そこで初めて理解できるのです。

 ルクソール神殿は、神殿という建物の構造を通じて人体の仕組みに関係しているのは明らかだと思います。そしてツタンカーメン王の墓の中から発見された宝飾品の数々も同じように人体の秘密を現したものです。

 古代エジプト文明の特色の一つは、死んだ人間を切り開いて内蔵を取り出し、現在でも一体どのようにして防腐処理が行われたのか解らない高度な技術を使ってミイラにすることが出来たことです。古代エジプトには人体に関する驚異的な知識があったことは疑いはありません。

その知識に関する視野や理解の角度が現在の方向性と違うために、現代人の視点からでは不可思議にみえる、理解不可能なように思えるのです。

 神殿建築とファラオの宝飾品は全く違った事柄のように見えますが、実は同様の考え方を土台にしたもので、この二つの共通点は、体内の錬金術の行程を理解するための〝立体的なテキスト〟なのです。

 

▶︎「王家の谷」へ続く